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11 自己破産手続の流れ

(2) 手続の概要

(イ) 債務者審尋
債務者審尋とは、裁判所が破産手続開始決定をするのが適当か否かを判断するために、債務者本人(法人の場合は代表者)と面談して事情を聴取する手続です。
弁護士が代理人についていれば、債務者ご本人が裁判所にお越しいただく必要はありません。
(ロ) 申立の棄却
破産手続開始の要件が認められない場合の他、申立人が予納金を納付しないとき、不当な目的で申立がなされたとき、その他申立が誠実にされたものでないときは、申立が棄却されることがあります(破産法30条1項)。
(ハ) 破産手続開始前の保全処分
申立がなされると、裁判所は、利害関係人の申立又は職権で、破産手続開始決定がなされるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他必要な保全処分を命じることができます(破産法28条)。
裁判所が保全処分を発令した場合、これに反する弁済などの債務を消滅させる行為は、破産手続との関係では無効とされます。
また、裁判所は、債務者の財産に対する強制執行などを一律に禁止する包括的禁止命令や(破産法25条)、保全管理人による財産の管理を命ずる保全管理命令をすることもできます(破産法91条)。
これらの保全手続は、いずれも破産手続開始決定前に債務者の財産が散逸することを防止するための手続です。
(ニ) 破産手続開始の決定
破産手続開始要件の存在が認められ、その他上記(ロ)の事由がない場合、裁判所は破産手続開始の決定をします。
これにより、以後、債権者からの強制執行、仮差押え、仮処分などの手続はすることができず、既に行われているものは失効します(破産法42条1項、2項)。
また、株式会社は解散します(会社法471条第5号)。
そして、裁判所は、破産手続開始の決定と同時に破産管財人を選任し、
(a) 破産債権の届出をすべき期間
(b) 債権者集会の期日
(c) 破産債権の調査をするための期間(または期日)(通常、破産手続開始決定の1か月後)
を定めます(破産法31条1項)。
例外的に、裁判所は、後に述べる異時廃止のおそれがあるときは、(a)および(c)の期間を定めないことができ(破産法31条2項)、把握している債権者の数その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、(b)の期日を定めないことができます(破産法31条3項)。
以後、債務者の財産の管理処分権限は、すべて破産管財人に移ることになります。
(ホ) 同時廃止
破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)となるべき財産が極めて少なく、破産手続の費用を償うに足りない場合には、破産管財人は選任されず、破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定がなされ、破産債権者に対する配当も行われないまま、破産手続が終了します(破産法216条1項)。
(ヘ) 債権の調査
破産管財人は、上記(ニ)(c)において定められた期間または期日(「一般調査期間」「一般調査期日」といいます)前の裁判所が定める期限までに、債権届出期間内に届出のあった破産債権について、認否書を作成します(破産法116条、117条)。
届出をした破産債権者および債務者は、この認否書に対し、一般調査期間内(または一般調査期日前)であれば、書面で異議を述べることができます(破産法118条1項、2項)。
(ト) 債権の確定
上記(ヘ)において、破産管財人が認め、破産債権者からも異議が出されなかった破産債権は、そのまま債権の存在と金額が確定します(破産法124条)。
他方、破産管財人が認めなかった破産債権または届出をした破産債権者から異議が出た破産債権については、その破産債権を有する破産債権者は一般調査期間の末日(または一般調査期日)から1ヶ月以内に破産裁判所に破産債権の額などについての査定を申立ます(破産法125条1項、2項)。
この申立を受けた裁判所は、破産債権の存否及び額などを査定する裁判をし(破産法125条3項)、裁判書を当事者に送達します(破産法125条4項)。
破産債権査定申立についての決定に不服がある者は、裁判書の送達の日から1か月以内に、異議の訴えを提起することができます(破産法126条1項)。
このように、権利の存否やその性質、数額などに争いのある破産債権について、通常の訴訟手続よりも簡易、迅速な確定手続が設けられています。
(チ) 財産の調査・管理
上記の破産債権を確定する手続と並行して、破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)を調査・管理する必要があります。その第一歩として、破産管財人は、債務者本人または申立代理人から全ての財産や帳簿などの引継ぎを完了して、債務者の財産を正確に把握し、これを管理することになります。
(リ) 否認権の行使
破産管財人は、債務者が破産手続開始決定がなされる前になされた行為であっても、債務者の財産を減少させる行為(財産減少行為)や、既存の債務についてされた担保の供与または債務の消滅に関する行為(偏頗行為)について、その法的効力を否定して、第三者に流出した債務者の財産を取り戻すことができます。これを「否認権の行使」といいます(破産法160条ないし176条)。
(ヌ) 財産の換価
破産管財人は、債権者に対する配当の原資とするため、破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)に属する財産を売却したり回収したりするなど現金化する必要があります。
たとえば、実務上、会社が所有する不動産については、不動産の交換価値以上の担保権が設定されている場合でも、担保権者が別除権(別除権とは、破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)に属する特定の財産について設定されている担保権をいい、破産手続によらずにその権利を行使することができます(破産法2条9項)。具体的には、特別の先取特権、質権、抵当権が別除権として扱われます。)を行使して競売にかけるのではなく、破産管財人が担保権者と協議の上、これを市場で売却して(これを任意売却といいます)、処分代金の一部(5~15%程度)を破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)に組み入れ、残りを担保権者への弁済に充てるという方法が一般的に行われています。これにより配当の原資となる破産財団は組み入れ分だけ増加しますし、担保権者としても、競売の場合、市場での売却価格よりもかなり安く落札されることが通常ですので、このような任意売却に応じることに経済的なメリットがあります。
また、任意売却が破産債権者一般の利益になり、任意売却をしても担保権者の利益を不当に害することがないにもかかわらず、担保権者が任意売却に応じない場合は、破産管財人の申立と裁判所の許可により、担保権を消滅させる制度もあります(破産法186条)。
(ル) 債権者集会
債務者の財産状況を債権者に報告し、また、免責について債権者の意見を聴取するために、破産手続開始決定の3か月後に「債権者集会」が開催されます。この債権者集会において、破産管財人は、
(a) 破産手続開始に至った事情
(b) 債務者及び破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)に関する経過及び現状
(c) 役員の責任追及に関する事項(破産法177条、178条)
(d) その他破産手続に関し必要な事項の要旨を、それぞれ報告します(破産法158条、157条1項)。
この集会には、債務者ご本人が裁判所にお越しいただく必要があります。
(ヲ) 異時廃止
裁判所は、破産手続開始決定後、破産財団(債権者への配当原資となる債務者の財産)が破産手続の費用を賄うのに不足することが判明したときは、破産管財人の申立により又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければなりません(破産法217条1項)。これを異時廃止といいます。
この場合も、同時廃止の場合と同様、破産債権者に対する配当は行われません。異時廃止となるのは、破産手続開始時に存在すると予想された財産が存在しなかったり、財産の価値が下落したりする場合などです。
(ワ) 破産手続終結の決定
裁判所は、最後配当、簡易配当又は同意配当が終了した後、計算の報告に対する債権者の異議申し立て期間が経過したときは、破産手続終結の決定をします(破産法220条)。
破産手続が終結すると、裁判所から法務局に対し、破産終結の嘱託登記がなされ、これに基づいて会社登記簿が閉鎖され、会社が消滅することになります。