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5 自己破産のデメリット

(2) 個人の場合

会社の代表者は会社の連帯保証人になっていることが多く、会社が自己破産した場合、会社が払えなくなった多額の債務の請求・取立ては会社の代表者個人に対してなされることになりますので、会社が破産するときは、その代表者個人も一緒に自己破産することが多いといえます。
ところで、自己破産のデメリットについての間違ったイメージから、「自己破産だけは避けたい」といって自己破産をためらわれる方がいらっしゃいます。
ところが、実際には以下のように、自己破産のデメリットは、自己破産のメリットに比べると、意外に少なく小さなものです。
(イ) 住宅(持ち家)の取扱い
住宅(持ち家)は、住宅ローンが残っている場合でも、残っていない場合でも、処分されてしまいます。
この場合、破産管財人の任意売却または競売により買手がつくまでの間、その住宅に住み続けることができます。買手がついた後も、引越の準備期間として1か月程度は買主との交渉によって住み続けられる場合があります。
自己破産の申立からどのくらいの間住み続けることができるかは、住宅がいつ売却されるかによりますので、一概には言えませんが、一応の目安としては、任意売却の場合で6か月程度、競売の場合で1年くらいになることが多いといえます。
自己破産を申し立てた後は、住宅ローンやその他の負債を返済する必要がなくなりますので、この期間中に落ち着いて引越先を探すことができます。
なお、どうしても住宅を手放したくない場合には、その住宅を誰かに時価で買い取ってもらい(破産管財人との任意売却または競売)、その人からその住宅を借りる方法があります。
(ロ) 所有財産の取扱い
まず、「同時廃止」(8(3)同時廃止事件をご参照下さい)の場合には、債務者の財産が処分されることは一切ありません。
他方、「少額管財事件」(8(2)少額管財事件をご参照下さい)の場合には、99万円を超える現金と時価で20万円を超える高価な財産は処分されることになります。
ただし、この場合であっても、生活に必要な財産が処分されることはありませんので、自己破産後もそれまでと変わらない生活を送ることができます。
自己破産をしても処分されることのない財産(これを「自由財産」といいます)は具体的には、以下のとおりです。
(a) 99万円以下の金銭
(b) 債務者の生活に不可欠の衣服、寝具、家具、台所用具、畳・建具
(c) 債務者の生活に必要な1か月分の食料及び燃料
(d) 農業・漁業従事者の農機具・漁具など
(e) 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付にかかる債権、給料、賃金、退職年金、賞与、これらの性質を有する給与にかかる債権の4分の3に相当する部分(ただし、この額が33万円以上の場合は、33万円まで)
(f) 退職手当及びその性質を有する給与に関する債権については、その給付の4分の3に相当する部分
(g) 恩給受給権、年金受給権・失業給付の受給権など
以上の法律で決められた自由財産の他、裁判所は申立または職権により、決定で自由財産の範囲を拡張することができます。
具体例として、預貯金、生命保険解約返戻金、退職金見込額(原則として8分の1)、車などは、それぞれの財産が時価で20万円以下の場合には、そのまま所持していてよいという運用がなされています。ただ、これはあくまでも裁判所の裁量による運用であり、裁判所により異なります。
(ハ) 自動車の取扱い
自己破産をした場合に、自動車が処分されてしまうかどうかは、自動車ローンが残っているかどうかにより異なります。
自動車ローンが残っていない場合、少額管財事件では、自動車の時価が原則として20万円を越える場合に限り処分されてしまいます。20万円を超えない場合には処分されることはありません。
自動車ローンが残っている場合には、原則として、処分されることになります。自己破産の申立後はもちろん、申立を弁護士に依頼した後も、一部の債権者のみに弁済することは法律で禁止されているため、自動車を維持するために自動車ローンだけを支払うことはできません。
このように自動車が原則として処分されてしまう場合にも、例外的に、自動車を維持する方法があります。
その1つは、自分の代わりに誰かに自動車ローンを支払ってもらう方法です。2つ目は、誰かにその自動車を時価で買い取ってもらって、その人から自動車を借りる方法です。いずれの方法でも、ローン会社の同意が必要になります。
3つ目は、自動車ローンが残っていない場合に限られますが、自動車が生活・事業に必要不可欠であることを裁判所に説明して、自動車の維持を認めてもらう方法です(「自由財産」の拡張といいます)。
(ニ) 生命保険の取扱い
少額管財事件では、生命保険の解約返戻金が20万円を超える場合には、原則として、生命保険を解約させられ、解約返戻金が債権者への返済原資に充てられます。
ただし、契約者貸付制度がある場合には、この制度を利用して保険会社から借入れを行い、解約返戻金を20万円以下に抑えれば、生命保険を解約する必要がなくなり、生命保険を維持することができます。
解約返戻金が20万円を超えない場合には、生命保険を解約させられることはありません。
そして、生命保険を解約しなくて済む場合、自己破産の手続中でも、掛け金を支払うことは可能とされています。
(ホ) 長期旅行・引越
自己破産をしても、「同時廃止」の場合には、旅行や引越が制限されるということは一切ありません。
他方、「少額管財手続」の場合には、手続期間中(申立時から3~6か月くらいの間)は長期旅行や引越などで居住地を離れる場合には、裁判所の許可を得る必要があります。もっとも、特に問題がなければ、裁判所の許可は容易にもらえます。この場合にも、免責許可の決定が確定した後は、このような制限はなくなります。
(ヘ) 郵便物の取扱い
自己破産をすると、「少額管財手続」の場合、手続期間中(申立時から3~6か月くらいの間)に、債務者宛の郵便物が破産管財人に配達されて、破産管財人がこれを開封して内容を確認する場合があります。
しかし、この場合にも、免責許可の決定が確定した後は、このような制限はなくなります。
他方、「同時廃止」の場合には、このような制限は一切ありません。
(ト) 職業・資格の制限
自己破産をすると、免責されるまでの期間中(申立時から6~9か月くらいの間)は、次のような一定の職業、地位に就けなくなります。
具体的には、弁護士、公認会計士、税理士、公証人、司法書士、弁理士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引主任者、警備員、旅行業者・旅行業務取扱主任者、生命保険募集員などの職業や、後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者、代理人といった他人の財産に関与する民法上の地位です。
(チ) ブラックリスト
自己破産をすると、消費者金融、銀行、クレジット会社それぞれの信用情報機関に登録され(いわゆるブラックリストです)、5~7年間は融資を受けたり、クレジットカードを利用することができなくなります。
もっとも、親族、友人、就職先など金融機関以外から融資・経済的な援助を受けることはもちろん可能です。
また、個人再生や任意整理など自己破産以外の債務整理方法の場合にも、自己破産した場合と全く同じ取扱いがなされますので、いずれにせよ何らかの債務整理をしなければならない方にとっては、この点は自己破産に特有のデメリットとはいえません。