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(5)破産手続における各種債権

(ホ)労働債権の取扱い

  • 破産手続において、従業員の給料債権や退職金等はどのように扱われますか

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  • 給料債権
    (1) 従業員の給料債権は、破産手続開始前3か月間のものに限り、財団債権となります(破産法149条1項)。
    (2) 破産手続が開始する3か月以上前に生じた給料債権は、優先的破産債権とされます(同法98条1項)。
    (3) なお、「給料」とは、は名目のいかんを問わず毎月支払われる労働の対価を意味します。
    (4) また、「破産手続開始前3月間に生じた給料」とは、給料の締め日や支払日のいかんにかかわらず、破産手続開始前3か月間の労働に対する対価部分を指します。
  • 退職手当
    (1) 従業員の退職手当の請求権は、
    (イ) 破産手続開始前に退職した場合は、退職前3か月間の給料総額に相当する額
    (ロ) 破産手続開始後に退職した場合は、a退職前3か月間の給料総額に相当する額またはb破産手続開始前3か月間の給料総額に相当する額、のいずれか多い額につき財団債権となります(同法149条2項)。
    (2) 退職手当の請求権のうち、上記2(1)以外の部分はすべて優先的破産債権となります(同法98条1項)。
    (3) なお、従業員が解雇された場合の退職手当請求権についても、上記2(1)以外の部分と上記2(2)の分類により処理されるものと解されます。
  • 退職年金の場合
    従業員の退職金が年金支給の場合にも、破産手続開始時(または退職時)の現在額に引き直して計算されたうえで、上記2(1)と(2)の分類により処理されます。
  • 優先的破産債権となる労働債権
    (1) 雇用主と従業員の雇用関係に基づいて従業員が取得する債権は全て優先的破産債権となります(同法98条1項、民法308条)。
    (2) 雇用関係に基づいて従業員が取得する債権は、給料、賞与、退職金等の賃金債権が中心となりますが、その他にも、身元保証金返還請求権、使用人の雇用主に対する損害賠償請求権等もあり、解雇予告手当(労働基準法20条1項)も含まれると解されます。ただし、社内預金返還請求権は優先的破産債権にあたらないとする裁判例があります。
  • 給料等の弁済の許可
    (1) 優先的破産債権である給料債権または退職手当請求権の届出をした従業員が、その債権の弁済を受けなければ、生活の維持に困難を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、配当がなされる前であっても、破産管財人の申立てまたは職権で、その全部または一部の弁済の許可をすることができます(破産法101条1項)。ただし、その弁済によって、財団債権または他の先順位もしくは同順位の優先的破産債権者の利益を害するおそれがない場合に限られます。
    (2) 優先的破産債権である給料等の破産債権を有する従業員自身に弁済許可の申立権は認められていません。しかし、破産管財人は、その従業員から弁済許可の申立をするよう求められたときは、直ちに、求めがあったことを裁判所に報告しなければなりません(同条2項)。従業員から弁済許可の申立があったのに、申立をしないときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければなりません。
    (3) なお、弁済許可により弁済を受けた従業員は、他の同順位の優先的破産債権者が同一割合の配当を受けるまでは、配当に加わることができません(同法201条4項)。
  • 従業員の救済制度
    (1) 従業員の未払賃金については、国の未払賃金立替払制度があり、従業員の請求に基づき労働者健康福祉機構が給与、退職金の一定範囲を立替払いします(賃金の支払の確保等に関する法律7条)。
    (2) 立替払いが実施されると、労働者健康福祉機構は従業員の賃金等債権を代位取得し、破産手続における従業員の地位もそのまま引き継ぐこととなります。